「石の扉」 加治将一 新潮文庫

ダヴィンチコードに続いて天使と悪魔も映画化と鼻息の荒いダンブラウンとソニーピクチャーズ。これをきっかけにフリーメーソン、イルミナティといったものに関する本を探していてこれを発見。これはフリーメーソンが根を生やす欧米人が書いたものではなく、日本人が書いています。著者はアメリカ生活で多くのフリーメーソンと出会い、帰国してからメーソンの取材を開始して平成16年にこの本のハードカバー版を出版しています。

第1章 秘密結社は静かに蠢く
第2章 フリーメーソンは私たちの日常に潜んでいる
第3章 秘密結社誕生
第4章 十字軍の遺恨
第5章 解き明かされる明治維新の裏
第6章 兄弟愛・救済・真実
第7章 受け継がれるフリーメーソンのマーキング
第8章 全能の目
第9章 メーソン国家の戦略
第10章 フリーメーソンの光と影

表紙をめくると最初のページにすべての記述は事実に基づいているという一行。
なにかどこかで見覚えのあるというか、ダンブラウンを意識しているというか、、、
ここまでの印象はトンでも本か?という疑い。
調査開始とともに著者がメーソンに入会しようと手続きを進めていく過程が描かれるものの最後になっても入会したかどうか明記はされません。
メーソンの起源をエジプトのピラミッド建造に関わる石工の組合組織(神を祀る神聖な場所を作る特殊技術を持った集団)まで遡ります。更にピラミッドは墓ではなく儀式を執り行う場所だという説を披露してくれます。これはうなずきやすい仮説でした。一方、実際に出土したミイラの説明が無いのは不満でした。
そしてこのメーソンの元祖ともいえる秘密結社というか技術者集団が十字軍やキリスト教、ヨーロッパの歴史と融合して現在の形に至ったという説明がなされます。
この過程でメーソンが技術者主導の組織から科学や精神的な自由を希求する人をかくまいながら現在の形に発展してきていると説明されます。

日本人が興味を引くのはこの本の本題ともいえる坂本龍馬と明治維新におけるフリーメーソンの役割のくだりでしょう。フリーメーソンが坂本龍馬達をヨーロッパやアメリカ、中国などに送って明治維新を先導したという仮説が大きく展開されていきます。メーソンがスポンサーでもあり、グラバーが影で糸を引いて維新が起き、日本の近代化の黒幕はメーソンだということですべての歴史を説明可能のような仮説が展開されます。この部分は同じ著者が「あやつられた龍馬」という小説を書いていてTBSでも取り上げられたようです。amazonのレビューでもダヴィンチコードより高い評価をつける人がいます。
実際に長崎などで外国人墓地を調査してメーソンのシンボルが彫られた墓石を探し出し、その写真が載っています。この写真からメーソンが日本に入っていた証拠であるという主張には説得力がありました。
この後はメーソンだと多くの面で得をするという俗っぽい事例の列挙になり、坂本龍馬のくだりの勢いはなくなります。

ダンブラウンの主張と一致する部分もありますがこの本ではパパブッシュはメーソンではないとしています。1ドル札の説明はダンブラウンとほぼ同意見。ピラミッドにあわせて三角形を書き、それにのるように逆方向の三角形を乗せると6つの頂点のうち5つにアルファベットがすっぽり入ります。これを並べるとMASONとなります。この辺の記述はダンブラウンの小説を読んでいるようでした。フリーメーソンのペンダントや指輪、ロッジの写真など資料も多く読みやすい本でした。ヒーローのように扱われる坂本龍馬ですがメーソンの傀儡的なものだったという話が本当なら面白いですね。男女のロマンスはないようですが興味深い仮説です。
フリーメーソンという証拠はどこにもありませんがメーソンは国の歴史に関することに組したような事実は極力隠すということが信条とのこと。
秘密結社も存在が証明されないから嘘とはいえない。
という著者の説は自らの仮説に証拠が乏しいこととも皮肉に共鳴しているように感じました。
ほかにもいくつかの映画を例に挙げてメーソン的な映像表現を解説してくれていますので
フリーメーソンに興味のある方には面白い内容かと思います。
(メーソン独特のサインが予想以上に多くのアメリカ映画で堂々と表現されているようです)
映画といえば「法王の銀行家」という映画を取り上げてP2のことも書いていました。

これは平成16年に出版されたハードカバーの文庫化ですが大幅に加筆があるようですから
ハードカバーでなく文庫版を買ったほうがいいでしょう。
700円でおつりがきますのでお勧めかと思います。
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by bonejive | 2006-06-11 22:31 | ダヴィンチコード
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