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同志社大学の講演「ダヴィンチコード」を読み解く

私の非常に有力な情報源でありますブログ「叡智の禁書図書館」。
こちらで同志社大学で6月10日に行われた講演「ダヴィンチコード」を読み解くという講演があるとの情報がありました。
http://library666.seesaa.net/article/18972636.html
昨日こちらをのぞいてみるとなんと同志社大学のHPで講演のビデオを流しているとの情報がありました。試しに検索してみてみると本当に見ることができました。
http://theology.doshisha.ac.jp/opencourse/index.html
簡単にネットで見ることができ感動しています。こんなにすごい時代になっていたなんて感無量です。二人の神学の専門科の教授が非常に分かりやすくダヴィンチコードを読み解いてくれ、またその話が分かりやすい!!
私は(ちなみに理系です)大学で感動するとか、分かりやすい講議というのはあまり聴いたことがありません。講演をされた二人の教授は話も上手く要点をきっちりまとめていて飽きることがありませんでした。こんな講議を受けられるなんて同志社大学の学生さんは幸せですね〜。
ただ、最初の先生は聴衆の多くが映画も原作も読んでいないことで大きな動揺があったようで、最後までこの動揺を引きづりながら話していた感じです。
・・・ネタばれを気遣うというか、み〜んな内容を知っている人達を相手に話すことを予想していたようでその点でちょっと話の進め方がぎこちなくなっているようでした・・・

ティーピングが蛇、ソフィーがエヴァであり、最後のクリプテックスの答えが「○○○○○」という設定だというまとめもあっそうか!と感動してしまいました。
ソフィーは蛇の誘いを断り、楽園を去ることはなかったということのようです。
結構ダンブラウンの話の構築は深いですね。
あと、資料の解釈に単純なミスも散見されるようですが物語を盛り上げるために確信犯的に過った解釈を誇張して述べていることもあると指摘していました。
例を挙げると単純なミスはナグハマディ文書、死海文書がもっとも古いキリスト教の文書という記述。死海文書は確かに古い文書ですがこれはユダヤ教の文書であり、またコプト語で書かれているということ。にもかかわらず原作ではアラム語と書かれているなどなど。
このあたりから話は福音書のほうへ広がっていきます。
しっかりダヴィンチコードの原作(小説の文章)を引用しながら聖書研究の最新知見をわかりやすく説明してくれとてもわかりやすかったです。
3人目にコメンテーターとして牧師さんが登場します。
牧師さんは保守的な福音派の牧師と自己紹介し、実際にダヴィンチコードを読み、
とても面白かったとコメントします。
興味深いのは福音派、彼らの基本的な考えが白か黒かということ。
宗教が同じでも宗派が違うとそれだけでも争いの原因になるわけですが、物事をこのように白か黒かで捉える価値観が根底にあるということに正直びっくりしました。
(隣人を愛し、許せという教えはなんなのかな〜?なんて疑問がいつも浮かびます)
ほかにもいろいろとありましたが是非自分の目で確かめてください。

全部で2時間16分ですが面白いですよ〜。
是非チェックして下さい。
# by bonejive | 2006-06-15 17:14 | ダヴィンチコード

「石の扉」 加治将一 新潮文庫

ダヴィンチコードに続いて天使と悪魔も映画化と鼻息の荒いダンブラウンとソニーピクチャーズ。これをきっかけにフリーメーソン、イルミナティといったものに関する本を探していてこれを発見。これはフリーメーソンが根を生やす欧米人が書いたものではなく、日本人が書いています。著者はアメリカ生活で多くのフリーメーソンと出会い、帰国してからメーソンの取材を開始して平成16年にこの本のハードカバー版を出版しています。

第1章 秘密結社は静かに蠢く
第2章 フリーメーソンは私たちの日常に潜んでいる
第3章 秘密結社誕生
第4章 十字軍の遺恨
第5章 解き明かされる明治維新の裏
第6章 兄弟愛・救済・真実
第7章 受け継がれるフリーメーソンのマーキング
第8章 全能の目
第9章 メーソン国家の戦略
第10章 フリーメーソンの光と影

表紙をめくると最初のページにすべての記述は事実に基づいているという一行。
なにかどこかで見覚えのあるというか、ダンブラウンを意識しているというか、、、
ここまでの印象はトンでも本か?という疑い。
調査開始とともに著者がメーソンに入会しようと手続きを進めていく過程が描かれるものの最後になっても入会したかどうか明記はされません。
メーソンの起源をエジプトのピラミッド建造に関わる石工の組合組織(神を祀る神聖な場所を作る特殊技術を持った集団)まで遡ります。更にピラミッドは墓ではなく儀式を執り行う場所だという説を披露してくれます。これはうなずきやすい仮説でした。一方、実際に出土したミイラの説明が無いのは不満でした。
そしてこのメーソンの元祖ともいえる秘密結社というか技術者集団が十字軍やキリスト教、ヨーロッパの歴史と融合して現在の形に至ったという説明がなされます。
この過程でメーソンが技術者主導の組織から科学や精神的な自由を希求する人をかくまいながら現在の形に発展してきていると説明されます。

日本人が興味を引くのはこの本の本題ともいえる坂本龍馬と明治維新におけるフリーメーソンの役割のくだりでしょう。フリーメーソンが坂本龍馬達をヨーロッパやアメリカ、中国などに送って明治維新を先導したという仮説が大きく展開されていきます。メーソンがスポンサーでもあり、グラバーが影で糸を引いて維新が起き、日本の近代化の黒幕はメーソンだということですべての歴史を説明可能のような仮説が展開されます。この部分は同じ著者が「あやつられた龍馬」という小説を書いていてTBSでも取り上げられたようです。amazonのレビューでもダヴィンチコードより高い評価をつける人がいます。
実際に長崎などで外国人墓地を調査してメーソンのシンボルが彫られた墓石を探し出し、その写真が載っています。この写真からメーソンが日本に入っていた証拠であるという主張には説得力がありました。
この後はメーソンだと多くの面で得をするという俗っぽい事例の列挙になり、坂本龍馬のくだりの勢いはなくなります。

ダンブラウンの主張と一致する部分もありますがこの本ではパパブッシュはメーソンではないとしています。1ドル札の説明はダンブラウンとほぼ同意見。ピラミッドにあわせて三角形を書き、それにのるように逆方向の三角形を乗せると6つの頂点のうち5つにアルファベットがすっぽり入ります。これを並べるとMASONとなります。この辺の記述はダンブラウンの小説を読んでいるようでした。フリーメーソンのペンダントや指輪、ロッジの写真など資料も多く読みやすい本でした。ヒーローのように扱われる坂本龍馬ですがメーソンの傀儡的なものだったという話が本当なら面白いですね。男女のロマンスはないようですが興味深い仮説です。
フリーメーソンという証拠はどこにもありませんがメーソンは国の歴史に関することに組したような事実は極力隠すということが信条とのこと。
秘密結社も存在が証明されないから嘘とはいえない。
という著者の説は自らの仮説に証拠が乏しいこととも皮肉に共鳴しているように感じました。
ほかにもいくつかの映画を例に挙げてメーソン的な映像表現を解説してくれていますので
フリーメーソンに興味のある方には面白い内容かと思います。
(メーソン独特のサインが予想以上に多くのアメリカ映画で堂々と表現されているようです)
映画といえば「法王の銀行家」という映画を取り上げてP2のことも書いていました。

これは平成16年に出版されたハードカバーの文庫化ですが大幅に加筆があるようですから
ハードカバーでなく文庫版を買ったほうがいいでしょう。
700円でおつりがきますのでお勧めかと思います。
# by bonejive | 2006-06-11 22:31 | ダヴィンチコード

ダヴィンチコードと天使と悪魔のトラップ

先日紹介した芸術新潮ではダンブラウンは美術史の専門家の奥さんのアドヴァイスで
物語を盛り上げるためにわざわざ絵画の解釈を過ったものにしている可能性があると指摘していました。私はこの話、結構真実味があるかと思います。

物語の冒頭ですべては事実に基ずくとわざわざ断ることが最大のプロットだと考えていましたが、芸術作品の解釈もわざと物語が盛り上がるように変えていると考えるとスッキリします。(というか、都合良く解釈していると考える方が正しいかも?)

特に鍵となる秘密結社そのものの存在がかなり怪しい。
ダヴィンチコードで言えばシオン修道会。
天使と悪魔ならイルミナティ。
これらは存在自体がかなり嘘臭く、ほとんど存在を証明することができない。
秘密結社だからそれも当然と言う解釈もあり得ますが、
客観的に資料をひも解けば真実は自ずと見えてくるでしょう。
それを承知で物語の材料に上手く取り込んだダンブラウンの作家としても腕前が素晴らしいと思うのですが如何でしょうか。
この2作品に共通する英語で書かれている暗号、
4行詩などダンブラウンが非常に上手く使っていると思います。
この英語の暗号自体が事実でないという主張の大きな柱になっていますが
それ自体がダンブラウンにとってはなにを今さら〜ということかもしれません。
そもそもCERNのマークも6を重ねたように見えますが、
まさか悪魔の6ということはないでしょう。

マーガレットスタバードの著書。
alice-roomさん( http://library666.seesaa.net/ )御指摘のごとく、
ダヴィンチコードはかなりここから引用して話を作っていますね。
最後の方で出てくるソフィーの祖母がラングドンに
「現代の吟遊詩人になれ」というフレーズ。
突然、出てくる吟遊詩人に違和感を感じることはないでしょうか。
彼女の著書を読むとこれがどういう脈絡で登場することになるか理解できます。
天使と悪魔の種本はちょっとよくわかりませんがダヴィンチコードは種本からストーリーの大筋はできそうな気がするほど種本をなぞっています。
実際、レンヌルシャトーの謎を種に荒俣さんは別の話を書いていますし、、、

現在と違い多くの一般市民が字を読むことができなかった時代では
芸術作品は人々を導く意味をもった正に象徴だったようです。
この象徴を上手くつかい歴史ミステリーを紡いだダンブラウンに拍手を送りたいと思いますが、彼のプロットに引っ掛かって何が嘘で何が本当か?ということを議論の対象にするのは?です。
彼の作品から芸術作品や宗教の歴史に興味を持ち、文献をひも解いて行くことがとても楽しいと感じています。
# by bonejive | 2006-05-31 13:41 | ダヴィンチコード

芸術新潮6月号「ダヴィンチコードの○と×」

芸術新潮6月号「ダヴィンチコードの○と×」
これ超お勧めです。
中世美術史専門の小池寿子さんと20世紀美術史専門の宮下誠さんの対談形式でダヴィンチコードの美術作品の解釈を斬っていきます。これが非常に読者の視点でわかりやすく面白い。
Chaptor1修道層シラス
サンシュルピス教会の写真がページを埋め、ぜひ観たいと思ったローズラインが目の前に!
このチャプターでは俳優の演技を評価しつつ何度もエーコの「薔薇の名前」を引用しています。
やはりこの作品は原作も映画も美術史の専門家には魅力的のようです。
二人の専門家はダンブラウンのエンターテインメント作家としての手腕を高く評価しています。
この章の最後のページはソニエールが防犯システム発動のために落とした絵画の写真。
「聖母の死」横2メートル以上の大きな絵画を一人で倒せたかどうかは?とのこと。
ここで注目すべきはこの絵画。
死の床のマリアの横で泣き崩れているマグダラのマリアが描かれています。
原作では詳しく触れられていませんが象徴としてはかなりの意味がありそうな作品です。
Chaptor2ダヴィンチ解読の姿勢は○だが答えは×
モナリザ、岩窟の聖母、最後の晩餐といったダヴィンチ作品の解釈はほとんど×。
どうやら美術の専門家の奥方の差し金でわざと面白くなるように解釈を変えている可能性もあるようです。すべては事実に基ずくという冒頭の一行が物語を盛り上げるための最大のプロットとすれば十分ありうることですね。まさにダンブラウンに踊らされているわけですね〜!
驚いたのはイエスでなくヨハネがマリアと結婚していたという説。
実際にそれを描いた絵画も出ていて感動しました。
といった具合で非常に面白い対談です。
写真もいいし、ファン必読でしょう。

十字軍の関連でこれまでの関連本ではまったく触れられなかったフランドル地方の話が提示されます。これまた興味深くていいです。
ブルージュにイエスの血を十字軍が持ち帰り聖血礼拝堂に祭られているといいます。
私はブルージュの聖血礼拝堂には何度か行きました。
このときはそのいわれをガイドで読んでへえーと馬鹿にしていましたが
ダヴィンチコードでカトリックの歴史に興味を持つともう一度行ってみたいと思います。
このころ私はこのような聖杯関係のキリストのまつわる聖遺物のいわれはカトリックの至る所にあり、真実とはなんら関係ないかのように思い、ほとんどその歴史などしらないくせに頭から単なる伝承に過ぎないと決めつけていました。
しかし、ダヴィンチコードをきっかけに色々と本を読んでみると歴史の面白さを知り
その地方のいわれも100%のでっちあげではなく史実に基ずいている部分も多くあることに気がつき心から反省しています。

笑ってしまう(カトリックをばかにしているわけではありません)のが15世紀の写本の挿絵でキリストがぶどう酒の絞り木で搾られていて血がしたたり落ちているのですが落ちながらぶどう酒となり、天使が聖杯でそのぶどう酒を受けているもの。これ最高です。

こんな感じで33ページの特集です。写真も大きくてきれいですしお勧めです。
# by bonejive | 2006-05-27 00:34 | ダヴィンチコード

Newsweek日本語版5/24発売号、映画「ダヴィンチコード」に4ページさく

Newsweek日本語版5/24発売号が映画「ダヴィンチコード」の記事に4ページを割き
更に最後の方で関連本の紹介も数行当てています。
この本の中ではパリのダヴィンチコード関連の名所を歩くガイド本もありそれに興味をそそられました。

さて肝心の4ページ分の内容です。
はじめの見開き2ページは原作のマリアについての仮説に対する数人の専門家(大学教授)のコメントが寄せられています。
まとめてしまうとマリアが使徒ペテロとの戦いに敗れたのかその後、弟子達が戦いに敗れたのか定かではありませんが、結局ペテロ達のグループがローマで勝利したためマリアの真実を伝える資料が乏しい点をふまえてもダンブラウンの仮説を支持する人は皆無に等しいということのようです。
途中マリアが娼婦にされたことにも触れています。
結局教会は信者獲得のために社会情況に応じて都合よくマリアを解釈したことも触れられていました。締めくくりのコメントで結局ダンブラウンも母や妻としてマリアをとらえ、純粋で経験な使徒の一人で性別は女という捉え方が不足しているというものが印象的でした。
また、12の謎として非常に簡単にダヴィンチコードの仮説と真実が書かれていましたがこの真実というのもちょっとまとめ過ぎていて?の部分もありました。

さて後半の見開き2ページは映画の評価です。
原作をB級アクションと定義した上で、あまりに原作に忠実すぎて消化不良。
トムハンクスは演技ができないくらい縛られていたし、オドレイも出演しなかったほうがよかったくらい何もできていないと酷評され監督も自分の個性を出す事すらかなわず、これまでのキャリアが嘘のようだとでもいいたいようでした。
この映画に欠けているものは登場人物を人間として描く事と指摘して記事は終わっています。

私はなんとか今週中に映画を見たいのですがどうもこれまでの情報を総合すると
原作の蘊蓄やプロットを詰め込みすぎて、登場人物まで作り込むことができなかったようですね。スタッフがまじめ過ぎたのでしょうか、、、

映画の最後ではこの物語はフィクションですというテロップが流れるようですね。原作の冒頭のあの一行はいったいなんだったのでしょうか。
誰もすべてが真実だとは思いませんが、映画の最後にこのテロップというのは興ざめですね。

それでもやっぱり私は早く映画がみたいな〜。
# by bonejive | 2006-05-24 18:28 | ダヴィンチコード